イスラエル・イノベーション庁(Israel Innovation Authority)とエネルギー・インフラ省は8月30日、重要鉱物(Critical Minerals)分野における初の「Ideation (Tnufa) Challenge」の採択プロジェクト5件を発表しました。
重要鉱物は、AI、半導体、エネルギー、電気自動車、蓄電池、防衛など幅広い産業に不可欠な資源です。一方で、その採掘・精製は限られた地域に集中しており、地政学的リスク、貿易制限、価格変動などによるサプライチェーン上のリスクが世界的に高まっています。
AIや半導体産業の急速な成長、クリーンエネルギーへの移行に伴い、今後、重要鉱物への需要はさらに拡大すると見込まれています。こうした背景から、各国では重要鉱物の安定確保や代替的な供給源の確保に向けた取り組みが進められています。
イスラエルは重要鉱物そのものを豊富に保有する国ではありません。そのため、イスラエル・イノベーション庁とエネルギー・インフラ省は、イスラエルの強みであるスタートアップ、ディープテック、研究開発能力を活用し、重要鉱物の探査、採掘、精製、サプライチェーン管理など、バリューチェーン全体における技術開発を目指しています。
今回のチャレンジでは、5つのプロジェクトが選定されました。
第1位には、Drillzyが選ばれ、100万NISの支援金を受けます。同社は、鉱山で使用するドリルにセンサーを直接取り付け、掘削中に重要鉱物の存在を特定するためのリアルタイムの地質情報を取得する技術を開発しています。
そのほか、SINQ、Sentinel Mineral、Diamonds Magix、AI TerraMetの4プロジェクトには、それぞれ20万NISが支給されます。これらのプロジェクトでは、塩水からの重要鉱物の抽出、サプライチェーンリスクの予測、ニッケルを利用した先端材料、産業副産物からのレア鉱物回収など、それぞれ異なるアプローチから重要鉱物問題の解決を目指しています。
今回のプログラムの特徴は、企業として正式に設立される前の段階でも、研究者や起業家が技術アイデアを検証し、初期の概念実証(PoC)に取り組める点にあります。採択されたプロジェクトには、資金だけでなく、イスラエル・イノベーション庁とエネルギー・インフラ省による継続的な支援も提供されます。
また、イスラエルでは重要鉱物に限らず、AIや半導体などの戦略的技術分野において、国内に大規模な製造能力を構築するのではなく、高度な研究開発や技術革新を通じてグローバルなバリューチェーンに参画する戦略が注目されています。
2026年8月にCalcalist Techが掲載した論考でも、AIによる半導体・メモリ需要の急増を背景に、イスラエルは韓国、日本、米国などと同じ規模の半導体製造能力を競うのではなく、チップ設計、新型メモリ、フォトニクス、アルゴリズムなどの高度な技術領域に注力することで、世界の半導体産業における存在感を高められる可能性が指摘されています。
重要鉱物をめぐる今回の取り組みも、こうしたイスラエルの技術主導型アプローチを示すものです。資源そのものを大量に保有するのではなく、探査・抽出・精製・材料開発・サプライチェーン管理などの技術を通じて、重要鉱物をめぐる世界的な課題の解決に貢献することを目指しています。
イスラエル・イノベーション庁は、今回選定された5つのプロジェクトを通じて、国内における重要鉱物関連の技術産業を育成するとともに、イスラエルおよび世界のサプライチェーンの長期的な強靭性の向上を目指しています。
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